2010年6月11日金曜日

プレゼンテーションZENを講義に活かす

今年の初めに、日経ビジネスアソシエでPresentation ZENという本の著者Garr Reynoldsについての記事を見つけて、プレゼンテーションの機会の多いがあれこれ迷いも多い私は興味を引かれた。公式サイトがあるということで、それを見てさらに興味を持った。ちょうどKindle DXを入手した後だったので、Amazon Kindle Storeから早速Presentation Zenを購入。

目からうろこ、もやもやしていたものが晴れる感覚。どんどん読み進み一気に(細かいところはスキップしたところもありますが)読了。

スライドの作り方(というか考え方)についての要点は本家のサイトに日本語でも書かれていて、すべて重要なポイントで私は影響を受けたのですが、それとは別に私がとても目を開かれたのは次の言葉。

Handouts can set you free.

配付資料を作ることで、(プレゼンテーションに関して)自由になれる。

僕自身、スライドをそのままプリントした資料は不親切だという思いがあって、以前から研究発表の際には配布用は昔ながらのレジュメ(handouts)形式、スライドは別途、極力文字は少なくして作ってはいた。

しかし、授業でも講演でもApple Keynoteでスライドを作る機会が飛躍的に増えてくると、別の資料を用意する手間までなかなかかけられず、いつの間にかスライドそのまま、あるいはそこから少し枚数を省いたものを印刷して配布するのが当たり前になってしまってた。せめてものこだわりは、通し番号をつけて、スライドの横は書き込み用の余白をつける、文字はできるだけ大きくするという程度。(どういう順番で見ていっていいのか分からない配付資料をもらうことがかなり多く、それは避けたかった。)

まさにPresentation Zenの著者Garr Reynolds氏のいうSlidument。つまりスライド(slide)と文書(Document)の両方を兼ねようとして、スライドとしても文書としても中途半端なモノができあがってしまっていたのだ。以前のスライドはこんな感じ。

ビフォー Before



slide_before039

slide_before020

一枚スライドを増やすと、中途半端に紙が増えてしまうから、何とか収まるように1つのスライドに詰め込む。グラフの出典を書かないといけないからそれをスライドに書き込むと、プロジェクターでもプリントでも読めない大きさになってしまう・・。いつもこんなジレンマを抱えながらスライド=配布資料作りをしている状態でした。さすがに文字が見えないとなると、グラフだけを集めた別紙資料を作り、配付資料が不統一で枚数もふくれあがり印刷も整理も大変・・・。

こんな状態が数年続いていたので、Presentation Zenを読んで、やるべきことが明快になったのだ。そこで心機一転今年度の授業では次のように配付資料とスライドを作り分けた。

アフター After



出典や細かな説明や図表はつぎのような配付資料(ハンドアウト)に掲載する。ただし、受講生が受け身にならないように、要所要所は穴の空いた状態にしている。

socialdemographyhandoutsp17

slide_after037

slide_after098slide_after099

配付資料に詳細を書いているので、プロジェクターに映すスライドには、一番頭に入れてもらいたいポイントだけをシンプルに表記することができ、スライドの枚数が増えても印刷に影響しないので、異なるポイント毎にスライドを分けることも自由にできる。

Presentation Zenの読んで再認識したのは、あくまでスライドは口頭報告の補助であって、そこに全て書き込んでしまったら報告者がいる意味がなくなってしまうということ。当たり前のことのようだが、スライドをそのまま配布資料にすることを考えてしまうと、ついつい何でも詰め込んでしまうのだ。

受講生の様子を見て補足説明が必要そうなところは、口頭や板書で補うことで、ライブ感が出る。



スライドはApple Keynote

配付資料はTeXで作っている。

TeXについては松阪大学時代の同僚奥村晴彦先生の『[改訂第4版]LaTeX2e(ラテック・ツー・イー)美文書作成入門』(技術評論社,2007年 )やその旧版で多くを学ばせていただいた。この本とサポートウェブサイトhttp://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/bibun4/で説明されているMacOSX(10.6)のTeX環境で作成している。ただしエディタはmiがメイン。

配付資料はもちろんMicrosof Wordなど通常のワープロソフトでも作成できるが、節立てのわかりやすさや、図表配置のきれいさを優先して、TeXで作ることにした。(入稿する論文はEGwordを愛用していたが残念ながら開発中止になり、また他の人と共有する場合はワードが多いが、自分で体裁まで完成させられる研究発表の配付資料などでは、ちょこちょこTeXを使っていた。)

まだ完全に慣れているわけではないので、作成に時間はかかるが、体裁より構成や内容に神経を集中しながら、きれいな体裁で仕上がるので、ベストの選択かなと思う。

受講生に感想を書いてもらったところ、この方式は好評で、特に次の感想は課外学習も促していることがわかり嬉しかった。

「毎回のスライドと配布物で、授業ではスライドと家では配布物と2段階で勉強できるのがよいので、これからも続けてほしいです」。

今は毎週毎週準備に追われてしまう状態で、完全にうまくいっている訳ではないが、TeXを使ったこの方式は図表の更新などもしていきやすいので、今後はもう少し楽に、いいものにしていけるだろう。(TeXのメリットについてはまたいずれ)

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