2012年7月21日土曜日

映画 The Visitor(扉をたたく人) 音楽で文化の壁を越える

うーん、いい映画でした。友達が勧めてくれたThe Visitor(邦題:扉をたたく人)。

どんな映画かを説明してくれているときに、その友達は「大学の先生が学会発表のためにニューヨークにある自分のアパートに行って、そこに見知らぬ移民がいて・・」などと言ったあとに、"He is like you(おまえみたいだよ)"と。

でも、アメリカ人がニューヨークに行くという話だよね、と確認すると、「そうだけど」・・。僕の場合は外国に来ているから、立場は違うのに、と、ちょっと不思議に思っていました。

先週の日曜は地域の図書館のDVDが2本とも貸し出されていたので、予約しておいたらすぐ後に貸し出しOKの連絡が。今日借りに行けたので、さっそく見てみました。

最初、なんだか学生に愛想のない老教授なので、こんな人と似てるかあ、と思いましたが、だんだん分かってきました。

コネティカット州の瀟洒な郊外住宅に住んでいる大学教授Walter。妻に先立たれて一人寂しく人生に疲れたような彼は、幼い子どものいる共著者の代わりに学会で発表するために、渋々ニューヨークの自分のセカンドハウスであるアパートに行く。そこには、知人にだまされて、他に住人がいるとは知らずに入居してしまっていた移民のカップル(シリア出身の男性とセネガル出身の女性)が。

行くところのない彼らを、とりあえずそのまま住まわせてあげたことから、交流が始まります。シリア人Tarekは、アフリカの太鼓Djembeをジャズクラブなどでバンドとともに演奏するミュージシャン。クラッシック好きのWalterにはまったく縁のなさそうな音楽ですが、無心に身体をリズムのせるDjembeに魅せられて、Tarakに習い始め、一緒に路上パフォーマンスに参加するなど、今まで知らなかった世界を体験しています。

僕の場合、妻は日本でピンピンしていますし(笑)、クラッシックしか聴かないようなタイプではまったくありません。しかし、Walterを見ていると、確かに、音楽を通じて、一回り以上若い友人たちや、今までと違う文化の中にどんどん入っていった、アデレードに来てからの自分と重なるものがありました。

映画の中のWalterにとってアメリカは自分の国ですが、そこに住む(不法滞在の)移民との交流によって、今まで自分と関わりのなかった世界に踏み込んでいきます。

もちろん、アメリカという国にとって「よそ者」がTarakたちだというつらい現実は、ストーリーが進むにつれだんだん見えてきます。

そういう訳で、今の自分の立場が、Walterに重なったり、Tarakたち移民に重なったり。ちょっと複雑ですが、友人がHe is like youと思った理由はよく分かりました。

しかし、そういう僕の特殊事情を除いても、とてもいい映画だと思います。ハリウッド映画のような派手さはないですが、じんわりと沁みてくる、心に残る映画です。

以下の公式Trailer(予告編)は字幕はありませんが、字幕付きのものも探せばすぐ見つかります。



借りたDVDに字幕はありませんでしたが、9割方の台詞は分かったので、英語がだいぶ聞き取れるようになってきていることが感じられたのもうれしい発見でした。少し前に借りたイギリス映画An Educationは半分くらい分からず、ネットで台本を探して肝心なところの台詞がやっと分かったという状態だったので・・。

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