2012年1月30日月曜日

英語(外国語)発音のキモ--学習編


さて、前回の続き。言葉の中の音が差の体系だという音韻論の考え方が、外国語(とりあえず英語)を話したり聞いたりするのに、どう役立つかという話です。

ネイティブの英語といってもいろいろあるわけで、聞き込んだCDと同じように話してくれるわけはないですし、そもそも教材のCDでも、アメリカ英語とイギリス英語の区別だけでなく、話す人によって微妙な発音の違いがあります。

そうは言っても、まずはCDやネイティブの先生のまねをして発音を覚えるのですが、英語ではどういう音とどういう音を区別しているのか、というところをしっかり理解しておくと、覚えやすくなりますし、自分で発音をし分ける、あるいは聞き分けるポイントが分かるようになります。

特に日本語を母語とする人は、とっても単純な音の構造だけを身につけて育っています。だから、日本語として同じ音に聞こえがちな音の区別を意識するのが、一番、分かりやすいと思います。「英語の発音は難しい」「発音問題が苦手」と思っている人は、英語の発音に日本語と違う音が際限なくあるように感じてしまうかもしれませんが、音素の数は有限で、たいしたことはありません。

一番分かりやすい例は、前々回のエントリーで書いたロスト・イン・トランスレーションにも出てきた、LとRの区別ですね。英語にある音素LとRの区別が日本語にはなく、どちらもラ行の音として聞こえ、また自分が発音するときも区別できず、誤解されたり通じなかったりするという問題です。

確かに聞き取るのは難しいところもあるのですが、話すほうについては「日本人には難しい」というのは、思い込みだと思います。どちらかというと、そう思い込んで、単語を覚えるときにこの違いを意識しないで覚えているということが、一番大きい原因ではないでしょうか。特にカタカナで外来語になっているものが、やっかい。僕自身も、単語は知っているつもりで、いざ使おうと思ったらLかRか分からず、とりあえずRの発音をしてみて通じず、Lに置き換えたら通じたというようなことが結構あります。お恥ずかしい話ですが、フリーマーケットをあまり意識せずに「free market」と言ってしまったら、話がかみ合わず、よく考えたらフリーマーケットは「蚤の市」=flea marketだったということがありました。free marketは自由市場(しじょう)ですね。ちなみに日本語のラ行の音をそのまま発音したら、どちらかというとLに聞こえるはずです。なぜローマ字のラ行がRになったのか不思議です(イタリア語の巻き舌に近いからかな?)。

音素の話に戻ると、標準的な英・米発音では、Rは舌を後ろに巻いて上あごに付けないまま前に戻して発音し、Lは一定時間舌先を上の歯の裏側の付け根につけて舌の裏を歯に密着させて発声しながら離してできる音です。日本語のラリルレロより舌がもう少し前に行って、かつ歯の裏に密着する感じです。

このサイトで単語と発音記号(IPA)が対応させてあり、音もアメリカ英語とイギリス英語(違いのはっきりしているもののみ)が聞けます。

ですから、RとLは舌の位置に気をつければ、相手に違う音として伝わりますし、自分が使い分けるようになれば、聞いたときの違いも分かりやすくなります。

次は母音です。

日本語の「あ」段の音、例えばアメリカの標準的な発音で「ハット」と聞こえる単語は、hat, hut, hotの3つがあります。「ハート」と聞こえる音を合わせると、hurtとheartが加わって、5つになりますが、アメリカ英語の場合、tの前にrの音が聞こえるので前の3つとは区別がつくでしょう。

 hat, hut, hotだったら文脈で区別できるだろう、というのは置いておいて、この3つの「あ」の音はどう区別されるか。母音は舌の位置と唇の形の差で区別されています。

hutはあいまい母音を強く発音したような音で、「あ」より口の縦の開きを少し小さくした音。hatは「あ」の口から微笑むときのように唇を横に引いて舌の位置が「あ」より少し高いところに行く。hotはhutよりも口の中の空間を広くするように意識すると舌が奥に引っ込む感じになるので、そこで発音する。

このサイトの表の左のvowels(母音)の上から3番目、1番目、9番目です。音も聞けるので聞いてみてください。

この区別を知っておけば、例えばfanとfunとか、iPadとiPodの区別がつくわけです。日本語でアイパッドと発音したらアメリカ人にはiPodと聞こえる可能性が高いと思います。

テストに出る発音問題対策としては、紛れやすい音をセットにして、差の体系として意識して覚えれば、ずいぶん楽に得点できるはずです。発音問題ほど覚える原則が少ないものはないのに、早々にあきらめられやすいんですよね。ただし、この区別を意識せずに覚えた単語をあとから覚え直すのは大変なので、中学生くらいのうちにはこのことを意識して、新しい単語を見たら、どの発音なのかを意識して口にしみ込ませるのが効果的です。

長くなりましたが、これで学習編は終わり、次回は、実際オーストラリアで英語を使うときに、こうした発音のとらえ方がどう役立っているかというお話をします。

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