2012年1月27日金曜日

異国で見るロスト・イン・トランスレーション(Lost in Translation)

前回のエントリーに写真を載せたBurnside Library。結構充実しているDVDコレクションを無料で借り出せることに気がついて、最近利用登録をしました。大学の授業で、うまく内容に関連した映画を活用すると、理解を深めてもらうのにとても有効なのですが、日本にいるときは結構夜まで忙しくて、見る時間がなく、なかなか新しい作品に出会うことができていませんでした。

 この滞在中に、いろいろな作品を見ておこうと思い、昨日ロスト・イン・トランスレーション(Lost in Translation)を借りて来て夜に見ました。こちらに来てから、何人かの人がいいといっているのを聞き、研究所のディレクターも日本人がどう感じるのか聞いてみたいと言っていたので、見てみたというわけです。

 あらすじはネット上のあちこちにあるので、ごく大ざっぱに説明します。ウィスキーのCM撮影のために日本を訪れた、人気のピークを過ぎたアメリカの俳優Bob Harris(Bill Murray)と、カメラマンの夫の日本での仕事のために一緒に日本を訪れた、結婚まもない女性(Yale大で哲学を専攻したという設定らしい)Charlotte(Scarlett Johansson)が主人公。同じ高級ホテルに泊まっています。Charlottは夫がほとんど仕事で出かけていて孤独な思いをしている。Bobは、始めてきた東京で、アナウンスや看板の言葉も分からず(字幕なしなので、日本語の分からない観客は追体験できます)、英語を話されても、Rの発音がLに聞こえてなかなか意志の疎通ができず、それ以外のコミュニケーションの仕方も奇妙に映るという状況で、家族と離れ今の自分の存在について思いを巡らせます。その二人が、同じホテルで顔を合わせて、ともに時間を過ごす中で、心を通わせていく(結末は書きませんが)というのが、大まかなストーリーです。

 僕は映画評をここに書けるほどの映画通では、まったくないのですが、ウェブで日本語のレビューを観ると、日本人の描かれ方について、「日本人をバカにしている」とか「(監督の)ソフィアコッポラは日本が嫌いなんだ」「いやなら日本に来なければいい」というような批判がとても多かったので、気になったのでした。

 外国での経験からよく分かる、と書いている人も結構いましたが、僕自身は、日本にきた英語圏の人の話をあれこれ聞いたり一緒に行動したり、留学生の様子を見たりした経験から、かなりリアルに描いているなあということが印象に残ったのです。

 彼らがカラオケやパブのようなところで行動を共にする日本人が変だというような批判も見ましたが、あれは外国から来た人たちが日本で一番接しやすい、海外滞在経験者を中心とする人たちとしてみると、とてもうまいところを描写していると感じました。日本人にとってはちょっとカチンと来るような主人公のせりふも、言葉の壁やあまりにコミュニケーションのすれ違いのいらだちから出てしまう言葉として、問題意識を持って描いていていると解釈すると、「監督自身が日本がバカにしている」というような批判はどうも的外れな気がします。

 細かいことですが、個人的に面白かったのは、Bobがホテルのシャワーをフックにかけたまま、身体を一生懸命かがめながら苦労して浴びているシーン。僕は逆にアメリカでもオーストラリアでも、シャワーが壁に固定されていることが多くて、とても不便で、日本のようにフックから外してホースが自由に動くシャワーが何で少ないんだろうと思っていたので、日本式のシャワーで困ることがあるとは思いも寄りませんでした。

 僕自身、異国でこの映画を見るというのはとても面白い体験でしたが、今は幸い現地の友達にも恵まれて、この作品の主人公にそれほど重なる心境ではありません。ただ、今回の滞在の最初の2週間ほどを思い出すと、言葉がある程度分かり、一度住んだことのあるアデレードでの滞在ですら、相当な孤独感、というより、まさにLostという感覚を経験したので、日本にきた外国の人の経験はこの映画以上のものがあるのではないかなあと想像した次第です。

 もっとも、Bobは短い滞在なのに、子どもは自分がいないことにもう慣れてしまったようだと寂しそうに言っているシーンには、自分を重ね合わせてドキッとしましたが・・。

 今日(1月26日)は、オーストラリアの建国記念日にあたる祝日Australia Day。大きなイベントのようですが、イギリスからの定住は先住民にとっては土地を奪われることの始まりだったわけで、Survival Day(Aboriginal Tent Embassy)という名前のイベントをアボリジニとヨーロッパ系のオーストラリア人が一緒にやっていたり、イベントを楽しみながらも、距離をおいてInvasion Dayという表現をしている人がいたり、結構複雑な様相の祝日。

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 一番あとからこの国を訪問している自分は、Survival Dayのイベントと友人のパーティーの両方に参加してきました。

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友人宅から近所の公園に移動して草クリケット初体験。ルールを覚えておいてよかった。

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